川原さんぽ紀行

川原散策が大好きで水面をずっと見ていられる水タイプの管理人による雑記。さんぽ界のブルーオーシャンを歩む。

ポール・ホーケン著「ビジネスを育てる」起業家向けの本だけど実は就活生の会社探しや会社員の視野を広げてくれる一冊

一介の会社員の私がベンチャー経営者向けのバイブルと書かれている「ビジネスを育てる」ポール・ホーケン著、邦訳版、坂本啓一訳 を読みました。

この本は自分にとっては金言溢れる一冊でした。起業家だけでなく、会社員やこれから仕事をするであろう就活の視野を広げてくれる大変参考になる本です。

読後に「これ就活のとき読んでおけばよかったなぁ」と思ったので、かつて就活生だった自分を振り返りながら印象に残ったことをメモしていきます。

ビジネスを育てる

ビジネスを育てる

 

 

大きな夢と志を持って、あなたにしかできないビジネスを、はじめよう。時代や国境を超えた「ビジネスの本質」を説く、ベンチャー経営者のためのバイブル!どのページにも明日の経営のヒントが満載!世界で200万部の実績『良書です。「現在(いま)」だからこそすべての起業家に読んでもらいたい』成毛眞 元マイクロソフト社 社長 ・・・本書帯より 

 

本書は1987年に出版され、日本語訳は2005年、そして2018/2/24現在アマゾンでは 中古品9冊のみが売られています。

訳者あとがきにも書かれていますが、1987年と今から31年前に出版されたと思えないほど新鮮な情報をくれる本です。筆者は本書で特に重視した点として、あえて成功事例のようなものは極力減らし、読者には一貫して「自分で考える」ことを様々な形で要求しています。 

 

そして私はこの本は自分にとっては面白いことだらけだったのですが、なぜ就活の時に読んでおきたかったかということについて取り上げると、

 

① 大企業の性質とデメリット、反対にスモールビジネスだからこそできること

② 企業の経営者がどのような視点で人を雇ったり配置するべきか

 

ということが書かれているいて、①は業界や企業研究と自分が働きたい会社選びをする上での参考になること、②は採用試験を受ける上で「相手がどのように自分を見ているか」、また「自分がどうなっていきたいか」を考えるための参考になるからです。

これらはもちろん就活の情報誌や対策本には書いてあることですが、学生の就活向けに書かれていることと、起業家が起業を成功させるために書かれている本では視点が違うと思います。

 

まず①大企業の性質とデメリット、反対にスモールビジネスだからこそできること

あまり一括りで表現するのは誤解を招いてしまうかもしれませんが、多くの就活生は比較的盲目的に大企業を志望しがちです。私自身もその一人です(大企業の内定取れなかったけど)。「安定していて給料もそれなりいいから」とか「自分のやってきたことがなんと無く役に立って大きなことができそう」「仕事が魅力的だと思う」とかそういうことが私の就活の根底にはあったと思います。浅くてすいません。

 

つまり、漠然と大きい会社で働くことが魅力的と考えていて、どんなふうに働きたいのかとその会社ではどういう働き方なのかについて全く考えられてなかったのです。

 

そして世間だって大企業がとにかくいいよって感じの報道が多いですからね。普通の就活生が大企業集中になっちゃってもおかしくないと思います。

本書で下記のようにかなり大企業のフットワークの悪さが書かれています。

がちがちの大組織の中でおりこうさんでじっとしているのは五十年代の人にとっては食うために必要だったかもしれないが、八十年、九十年代の働く人にとってのモチベーションになるのは自分のキャリアをいかに築いていくかなのだ。仕事に対する大きな満足や自己啓発にもつながる。 p. 21
いいかい、大企業はただ大きい、というだけの話なんだ。それを忘れてはいけない。非効率的だし、非生産的だし、日革新的だ。いたずらに検討と会議を重ねるだけで、大企業はスモールビジネスの足元にも及ばない。p. 64

 

デメリットばかりになっていますが、当然大企業にはたくさんのメリットがあります。

私が言いたいのは大企業にはもちろんメリットがたくさんあるけど、こういうデメリットもある、だからそれらを理解して企業探しをすることが大切だなぁと考えておけばよかったということです。著者は決してスモールビジネスだけを勧めているわけではないのですが、このような仕事の良さを熱く語っています。

スモールビジネスは大企業のレーダーの下をかいくぐって自分専用のニッチな市場を作り上げられる。 p. 64

 

特にここですね。大企業はニッチで市場規模の小さいものに敢えて参入する価値がないと判断してしまう一方、多くのことに取り組めないスモールビジネスは自分専用のニッチな市場を作り上げられる。そしてそれが大きく成長する可能性を秘めている。

 

つまり、本当に自分がやりたいことが当てはまれば大企業にこだわる必要はない。無数にある小さな企業から自分のやりたいこと見つける、あるいはいっそ起業してしまうという選択肢が浮かんでくるということです。

 

私自身、頭の中に常にこの考えがあれば、より濁りの無い会社選びができたのではないかなと思った次第です。

 

そして② 企業の経営者がどのような視点で人を雇ったり配置するべきか

これは主に第十章の良い仲間で良い会社を作ろうに書かれています。

 

スミス&ホーケンの採用でぼくたちが重要視するのは、応募者のハートだ。いい人物だろうか。社内の仲間を好きになって一緒に働きたいと思ってくれるだろうか。顧客を好きになり、必要なアシストをしてくれるだろうか。ぼくたちの求める仕事のクオリティに応えてくれる人物だろうか。応募者がこれまでどの会社で働いていたとか、何をやり、何ができなかったとかいう業務履歴より、その人物そのものにより興味がある。p.246

 

スミス&ホーケンでは、前職時代ある一つの分野で良い実績を残した人を採用する。そして、採用後まったく畑違いの部署に配属するのだ。はじめのうちこそ、この人事配置は新人が新しいスキルと専門性を要求されるので活躍できないのではないか、そしてこのことはわが社にとってハンディになるのではないかと思った。しかしそれは杞憂だった。その人物が本当に優秀であれば(前職の活動で見られるように)、そして新しい職務が本人の能力に合うのであれば、急角度の学習曲線を描く。そう、異分野など関係なく成長し、結果を出してくれるのである。p.252

 

 よくある人物重視の採用って何を言っているのかわかりにくいですけど、こういう考え方が背景にあると考えれば答えやすくなると思います。

本当に私は就活の時なんも考えてなかったなぁ(笑)

 

そしてもう一つの引用は前職時代の実績について触れています。これは就活でいう学生時代に頑張ったことっていう質問でしょうか。

 

もちろんここで書かれているのは著者の会社の例で、企業によっては本人の専門性にマッチした職に配置したい、と思うでしょう。

 

ですが、こういう採用側の思惑も考えてみると自分が注力することとアピールすべきことが見えてくるのではないでしょうか。

 

就活が終わっている私が就活のことを書くのもなんか変な気もしますが、今の時代に一生同じ会社に勤め続ける可能性はかなり低い以上、会社員の我々も就活時代のマインドを常にアップグレードして次に生かしていきたいものです。

 

それが起業の本を読んで、あえて自分のメモを就活という切り口で書いた理由です。

 

自分自身、この本で再度仕事や人生との関わり合いと、今後の戦略を考え直すいい機会を作ることができました。とにかく著者のいうように「自分で考える」を当たり前ですが実践していこうと思います。

 

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ちなみに著者は持続可能性社会の実現とビジネスの関係についてのオピニオンリーダーでありサステナビリティ関連書籍もたくさんあります。私が著者を知ったきっかけもそれでした。この持続可能性社会に興味がある方にもおすすめです。